摂食障害の衝動性の背景

「嗜癖(アディクション)」の原動力である「渇望(craving)」は、「気分不耐」から生じ「内的苦しみからの一時的な開放感」や「自発性・合理性能力の低下(コントロール喪失)」を伴うという特徴があります。

 

「気質」は心理的不調が起きた際の「内容の決定因子」になり、「性質・性格」は「心理的不調が起きるかどうかの決定因子」であり、その間には、成人のアタッチメントスタイルやソーシャルサポート、あるいは対処行動(コーピング)など、さまざまな因子が関与してきます。

「内的苦しみからの一時的な開放感」をもたらすような「嗜癖(アディクション)」は、ドーパミンと関連が深い「新奇追求」という気質と関連があることがわかっています。

また「嗜癖(アディクション)」ではセロトニンが関与する「損害回避」という気質と負の相関があり、
危険な行動に対し、怖れや心配が低く、制御できない行動制御の障害が起きやすくなります。

「新奇追求の高さ」と「損害回避の低さ」という気質が、「嗜癖(アディクション)」の特性でもあるのですが、それだけで同じ行動選択が起きるわけではなさそうです。

 

気質は行動を「触発」「抑制」「維持」「固着」しますが、これらは経験による学習によって再構築を繰り返し、新しい適応的な反応に変容することが知られています。

つまり「性質・性格」は環境への働きかけで変化しうるものでもあり、環境との相互作用によって身についた「性質・性格」が「気質」を調節する形でパーソナリティの成熟につながるのです。

 

環境との相互作用の中で、最も影響力のあるのが、このブログでも『如実知自心』でも話題にしている「愛着(アタッチメント)スタイル」です。

これまでの研究では、親の養育態度の高得点と、「自己志向」という「性格・性質」が正の相関を示すことがわかっています。
「自己志向」とは、自尊心を含む概念で、難しい局面を挑戦や好機とみなし、過程や結果の受容(責任)と目標に基づく行動選択であり、「自己志向」の低さは、自己愛の病理と関連し、非難がましく不安定で気分の変動や依存性が高くなり、「自己志向」が高いと責任感や臨機応変が可能になり創造性に結びつきます。

「新奇追求の高さ」と「損害回避の低さ」という気質が過食という「嗜癖」に向かう行動を抑制しており、これを可能にしていたのは親の養育態度の良好さによって培われた「自己志向(自尊感情・自己肯定感)」です。

 

しかし「自己志向(自尊感情)」は親の養育態度のみで決定されるのではなく、『修正アタッチメント体験』で触れたように親の関与よりも子ども側の要素が大きく、さらに恋人やパートナー、あるいは親友との関係、または治療者・セラピストとの関係の中でも「周囲の人への信頼感の回復(修正アタッチメント体験)」が可能かどうか、変化できたのかどうかによって規定されているのです。

 

対人関係療法による過食症の治療で、重要な他者との関係をみていくのは実は、対人環境への働きかけ(ソーシャルサポート)が対人関係(愛着スタイルや「協調性」)の変化をもたらし、自己洞察学習による気質の再組織化(コーピングスタイル)によって「自己志向(自尊感情)」を高めることで、新しい適応的な反応への変容を目指しているのですよね。

院長