摂食障害の考え方のクセと深い自己肯定感

過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)は、「行動依存」と言われます。

以前は神経性過食症(過食嘔吐)や過食性障害(むちゃ食い症)は、体重増加恐怖症であるとか、過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)などの症状はストレスを表すもの、と考えられていました。

 

しかし最近の研究では、摂食障害行動はさまざまな感情から一時的に気を逸らすための「対処行動(気分調節行動)」であると考えられるようになっています。

 

過食症の明白な症状は、食行動と体重増加恐怖を軸に回転しているように見えますが、過食症は実際には、個人的苦悩、感情的苦痛、化学物質(脳内物質)の不均衡に対処するための一つの方法です。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

体重や体型、あるいは食べることに関連した不安や罪責感、恥ずかしさの解消方法として始まったはずの過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)などの摂食障害行動は、次第に食事とは関係のないイヤな気持ち全般、あるいは他の領域まで広がっていき、気分調節のための対処行動であったはずの乱れた食行動が「だんだんその力を人生の他の領域を管理する力と混同」して悪循環を形成してしまうのです。

 

とても強い気持ちを掻き立てられるようなことがあると、いつでも自分の馴染みのある方法で反応し、一番効果的な方法で対処したいという衝動に駆られます。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

三田こころの健康クリニック新宿の〔専門外来〕では、ポーシャ・ネルソンの「5つの短い章からなる自叙伝」を紹介して、「心のクセ(パターン化した対処行動)」について注意を促していますよね。

そして、「心のクセ(パターン化した対処行動)」から抜け出すために、「状況—行動—結果」のモニタリングとともに、①うまくいってるものは変える必要はない、②一度でもうまくいったら続けてみる、③うまくいかなければ別のやり方を試してみる、などのコーピング(対処方法)の原則を教えていますよね。

 

過食衝動もそうですが、きっかけになる刺激に反応して自動的に引き起こされる認知(自動思考)は、その後の気分や行動に一貫した影響力を持たないとされています。

 

思考というものは、今までに周囲から学んだり、自分の中から湧き上がったりしてきた概念や信念に基づいていますが、そうした思考には、間違った情報を含んで私たちを誤った方向へ導きかねないものがたくさんあります。

(中略)

何かに対して最初に頭に浮かぶ考えを「自動思考」と考えると、わかりやすくなります。
自動思考は、健全でバランスが取れている場合もありますが、ストレスが強くて感情が高ぶっているときには歪みがちで、どのように歪んでいるのかはたいてい予測しやすく、自分にとっては苦しいものとなります。

(中略)

歪んだ思考は、たったひとつからでも滝のように一連の反応をたどって大きくなり、苦痛な感情を強め、不健康な行動を引きだし、最後には人間関係にまで支障をきたしかねません。

コスティン、グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

自動思考(最初に浮かんだ考え)が不適切な(機能的ではない)対処行動につながってしまう原因の1つは、心配、反芻、思考抑制などの思考プロセスを無意識的に選択、実行するため(これが自動操縦です)、と考えられているのです。

 

行動変容を動機づける5段階の「前熟考期」の人たちは、摂食障害から回復する10の段階のうち「1.私には何も問題なんてない」「2.もしかしたら問題なのかもしれない、でも大したことはない」「3.私には問題がある。でも気にしない」の段階にとどまっていますよね。

過食が起きた状況に対する「代償行為を」がもたらす中期・長期的なメリットとデメリットを振り返ることが抜け落ちている「自動操縦(意識化されていない)」状態が、「嗜癖(クセ)や行動依存としての乱れた食行動(摂食障害症状)」につながっているのです。

 

「4. 変わりたいけど、どうしたらいいかわからないし、怖い」「5. 変わろうとしたけど、私にはできなかった」の「熟考期」の人たちは、『素敵な物語』や『8つの秘訣』を読んだり、自分の気持ちや心の状態を振り返ると、摂食障害症状が悪化することがあります。

冒頭に書いたように、摂食障害行動は「気分調節行動」ですから、今、自分は「心が動くことに耐えられないんだ」「心が動くことが摂食障害行動につながっているんだ」と理解することが回復への第一歩になります。

そして「乱れた食行動から回復するためには、心がどう動いているかを自覚し、誰しも感じる気持ちを抱えておけるように心の枠組みを広げていく必要があるんだ」と理解できる段階、つまり変化に向き合う準備ができた「準備期」に進むことで摂食障害行動から回復するための本格的な治療が始まるのです。

 

過食は、「セルフメディケーション(自己投薬)」の一つの形態である可能性が高く、欠乏している栄養素や神経科学物質への渇望を満たしているのです。
また、代償行為は過食をしてしまったことによって失われたコントロールと、自分は安全なのだという感覚を取り戻して、恐れている体重増加を防ぐための効果的な方法です。

代償行為は、体重を落とすための一見手っ取り早い方法として始まるかもしれませんが、すぐに中毒化してしまいます。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店

 

「食べたものを吐けばやせられる」という、根拠がないどころか人生を台無しにする考え(間違った情報)を本気で信じている人たちは、「本当にそうか?」「この方法は危険がないのか?」「この方法を選択することはどんな代償を伴うか?」など、自分の信念を吟味してみることをせずに、すぐにその考えに飛びついて、その考えの中に没入してしまうことが問題なのです。

 

通常、私たちは「考えを事実と思う」という「自動操縦状態(認知的フュージョン)」の中で生きています。

「考えは事実(現実)と違う」ことを意識できるようになれば、考えそのものが変化しなくても「考え」との関わり方が変わり、「批判的な思考の群れ」や「摂食障害思考」に支配された行動を続けることから抜け出せるのです。

 

過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)の根っこ、つまり、自分は本当は何を欲していて、何が必要なのかを見極めることと「ありのままの自分」を認めることがすごく大切です。

自分の醜いところや、人を恨んだり妬んだりする気持ちを含め、ただそのまま、あるがままに認めることができる〔自己受容に伴って生じる深い自己肯定感(諸富, 2016)」を培っていくことが過食(むちゃ食い)や過食嘔吐(食べ吐き)などの乱れた食行動からの回復のプロセスになるんですよ。

 

院長