摂食障害の月経前症候群と月(身体)のリズム

ノルウェーの精神科医フィン・スカーダーアッドは、「体への思いやり(マインディング・ザ・ボディ)」と呼ばれる摂食障害の治療法を開発したことで知られています。

「体への思いやり」は、身体への過剰な焦点合わせと気づきの欠如の中間の「心で体を思うこと(身体と関連づけられたメンタライジング)」の促進を目指していきます。

「体への思いやり」は、3つの要素からなっています。

  •  満たされなさを感じている心理的な希求と身体の状態(空腹)を混同しないこと。
  • 自分を文字通りの身体(たとえば、太っていることと嫌な人間であること)と関連づけるのではなく物理的現実であるとともに比喩的な表現(たとえば、力強さ)と理解すること。
  • 情動状態(気持ち)を身体感覚としてとらえること。

素敵な物語』で何度も繰り返し説明されていることと同じですよね。

乱れた食行動を克服するためには、女性としての体との新しい関係、つまり、体からのメッセージやシグナルをしっかりと受けとめて大切にする、そんな関係を築くことが必要不可欠です。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

素敵な物語』でも身体との関係、体の英知を再発見することが、摂食障害から回復するために必要なことが強調されていますよね。

身体が感じていることをそのまま受け取る/感じてみる体験は、愛着(アタッチメント)の修復でも非常に大切なプロセスになるんですよ。

 

生理前にいつもより多く食べていると感じたら、それは、身体的な空腹感によるものか、それとも心の飢えによるものかを見極めるために、自分の体によく耳を傾けなさいというシグナルだと認識してください。
体のありとあらゆる感覚により注意深くなって、子宮の動きと身体的な空腹シグナルを取り違えないようにしなければならない時期なのです。
高まった感受性を用いて、自分が感じている本当の気持ちに向き合ってください。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

月経前に過食が起きやすくなることも含め、身体の生理的メカニズムや周期に対して注意深くなることは、過敏になることとは異なり、自然なことを自然なこととして受け入れるということです。

 

私たちの暮らすこの現代社会は、長いこと自然界のリズムからかけ離れてしまっているため、この誤解を助長してしまいます。「一ヶ月のうちのこの時期」に感情や食行動をコントロールできないと言えば、当然のように、その人に何かしらの問題があるに違いないと思われてしまいます。排卵時期にいつもと違う行動をしたり、違う感情を抱いたりしても、何か問題があるに違いないと考えられてしまうのです。

そしてそういった「症状」には素晴らしい診断名がつけられています。

PMS(premenstrual syndrome)、すなわち、月経前症候群という一種の病気だというわけです。

このような文化的な態度により、女性たちは、体は感情や渇望を通して何を伝えようとしているのかと自問することもありません。何が起こっているのだろう、と自分の奥深い内面と向き合うこともありません。代わりにダイエットプランを狂わせ、突飛な行動をとらせただのと言って、生理を呪うのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

対人関係療法で治す 双極性障害』にも、「現代の人間の生活が、自然を離れた不規則なものになってきており、健康への弊害が認識されているということだと思います。」とあるように、生物にとって自然なことなのかどうかを考えてみる視点が必要ですよね。

月経に伴う腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなど、さまざまな身体症状(月経随伴症状≒月経困難症)は、日常生活が困難になるくらい苦痛なものなのかもしれません。
身体症状に加えて情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感などの精神症状についても、自分の心と向き合ってみるように、とジョンストン先生はおっしゃっていますよね。

 

生理前に食欲が増し、生理中に減るというのは、月ごとの自然なリズムのひとつかもしれません。もしそうなら、生理中に少し体重が増え、生理が終わったら減る、ということもあるでしょう。一ヶ月を通して体重が増減するというのは、月の満ち欠けと同じで、ごく普通のことなのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

 

月経前症候群になりやすい人の特徴として、真面目で几帳面、完璧主義、ネガティブになりやすい、ハードワークが続いている、タバコやお酒、カフェインなどの嗜好品の摂取量が多い、乱れた食生活などが挙げられています。

三田こころの健康クリニック新宿では月経前症候群の治療として、その人の体質(証)に合わせて漢方を処方することもありますし、あるいは三種類の漢方を含有した市販薬をお勧めすることもあります。

漢方で症状を感じなくすることではなく、身体の状態を知り、身体との向き合い方を変えることが月経前症候群の治療です。

向き合うべきことは、月経前症候群の症状ではなく、自然なリズムに対する不自然なとらえ方の方だということです。

ですから月経前症候群の時期は、自然からかけ離れていた自分自身や生活習慣を自然なリズムに戻す良い機会として捉えてみることも、乱れた食行動(摂食障害症状)から回復するための1つの対処法になりそうですよね。

 

8月14日(月)ブログはお休みで、8月15日(火)は専門外来もお休みになります。
ブログは8月16日(水)にエントリーしますのでお楽しみに。

院長