摂食障害と衝動性と病状の推移

摂食障害では、むしろ強迫的な色彩の強い「過食を伴わない拒食症/神経性やせ症」から、「過食を伴う拒食症/神経性過食症」に、さらには「嘔吐を伴う過食症/神経性過食症」や、排出行動の見られない「過食性障害」に移行したり、逆に、「嘔吐を伴う過食症/神経性過食症」から、「過食を伴う拒食症/神経性過食症」への移行もみられます。

このような病型の移行について切池先生は「鰤(ブリ)みたいな出世魚のように成長段階で呼び名がかわる」とおっしゃっています。
(『摂食障害の診断と精神病理に見合った治療法』参照)

 

過食(ストレスを麻痺させるための過食)を衝動性と見なすと

○元来、衝動性の高い人が、過食や自己誘発嘔吐などの病型に移行しやすい
○過食(飢餓過食)によって二次的に衝動性が亢進する

という2つの考え方があるようです。

 

永田先生らは、多衝動性過食症を調査し、摂食障害の発症前から自傷行為や自殺企図があることから、衝動性は混乱した摂食行動によるものではない、と考察されていますが、摂食障害と衝動行為の関連は単一でなく、衝動行為の種類により異なる可能性が示唆されています。

たとえば、よく見かけるところでは、抜毛障害(抜毛症)と排出障害(+主観的過食)は、とらわれとこだわりの反応としてのくり返し行為などとして、運動-強迫関連性の強迫スペクトラム障害・衝動性として見られます。

 

一方、水島広子先生は、このような摂食障害の病型の移行を促すのは、生まれつき決まっている四つの因子(気質)のうち「冒険好き」スコアの高さとおっしゃいます。

「過食を伴わない拒食症」に見えた人が、「過食を伴う拒食症」に移行したり過食症に移行したりすることもあります。
クロニンジャーの七因子モデルで「性格」を調べたときに「冒険好き」スコアが高ければ、移行の可能性は極めて高いので、最初からそのことを視野に入れた治療をする必要があります。
また、「過食を伴わない拒食症」の人は、一般に回復期に一時的な過食になります。
それまで足りていなかった栄養を取り戻すのですから、たくさん食べて当たり前なのですが、それが単なる回復期の過食なのか、新たな過食症状の始まりなのか、その判別ができないと治療の方針を誤ることにもなりかねません。本人も心配になります。「冒険好き」スコアが低い患者さんの場合には、安心してどんどん食べてもらえます。
このように、患者さんの「性格」を知ることは、その後の経過を予測する上でもとても役に立ちます。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

 

水島先生がおっしゃるように「判別ができないと治療の方針を誤ることにもなりかね」ないのです。
実際に、某・大学病院で「過食を伴わない拒食症/神経性やせ症」と診断された患者さんが、過食が起きてきたので心配になり相談したところ「回復期の過食だから心配ない」と言われたけれども、体重が増えても過食が止まらないばかりか、自己誘発嘔吐を伴うようになったため三田こころの健康クリニックを受診されたことがあります。

 

この頃はクロニンジャーのTCIは使っていなかったのですが、強迫性も高く、アレキシサイミア傾向と気分不耐が認められたため「嘔吐を伴う過食症/神経性過食症」と診断しました。
(『情動コントロールと摂食障害』参照)

 

似たような話は某・大学病院だけではなく、「対人関係療法やってます」のいい加減なところで生育歴や生活歴は、ほとんど聞かれず、摂食障害に先行する強迫性障害を見落とされていて、摂食障害の対人関係療法が終わってから「気分変調性障害もあるからここでは治療できない」と言われた患者さんもいらっしゃるのです。
(対人関係療法の適応になる気分変調性障害と強迫性障害の区別もできないレベルということです)

 

対人関係療法では患者さんの健康な部分の助けを借りながら治療を進めていくのです。
その時に必要になるのが

「生まれつき決まっている四つの因子(クロニンジャーの気質:新規追求・損害回避・報酬依存・固執)」は、「自尊心」を高めるために重要な役割を担っています。
(中略)
「自尊心」を高める大きなポイントの一つは、「自分をよく知る」ことです。
自分の努力では変えることのできない「生まれつき決まっている四つの因子」を認識し、それをプラスに生かしていくことが、「自尊心」を高めることにつながるのです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

ということですから、三田こころの健康クリニックでは、悪いところを直すのではなく、「健康な部分を伸ばしていく」と説明していますよね。

 

摂食障害や気分変調性障害の対人関係療法を受けたいと思われる方は、『対人関係療法の現状』に書いたような治療者の必須条件を目安に医療機関を選んでくださいね。

院長