摂食障害と強迫性障害の関係

摂食障害のうち、「むちゃ食い障害/過食性障害」を除けば、摂食障害の食行動異常の背景には、体重や体型、あるいは食事に対するコントロールへのとらわれとしての「肥満恐怖」(恐怖症的回避行動)、体重や体型に対する過大評価としての「やせ願望」(支配観念)があり、それらがさまざまな程度に組み合わさって強迫観念や強迫行為、あるいは渇望・衝動性として表現されます。
(『衝動性と強迫性〜摂食障害との関係』参照)

とくに「過食を伴わない拒食症/神経性やせ症」や、「過食を伴う拒食症/神経性過食症」では、やせが慢性化するようになるにつれて、抑うつ的となり、さらに強迫性が亢進することから「過食を伴わない拒食症/神経性やせ症」や「過食を伴う拒食症/神経性過食症」での強迫性は、低体重・低栄養による二次的な強迫性と見なされています。

 

DSM-IVにもとづく併存症の検討では、拒食症群では何らかの不安障害の併存が24〜55%で、そのうち強迫性障害は7〜35%、拒食症の既往を持つ過食症では強迫性障害は42〜44%、過食症群では強迫性障害は38〜40%と報告されており、「過食を伴わない拒食症/神経性やせ症」を除いた過食をともなう摂食障害の約60%前後に何らかの不安障害の併存があり、そのうち約40%前後が強迫性障害だったと報告されています。

強迫性は摂食障害発症のリスクである可能性だけでなく、摂食障害の発症後には強迫性が増強され、難治化要因の1つである可能性が考えられているのです。

 

「神経性やせ症/過食を伴わない拒食症」と「神経性過食症/過食を伴う拒食症」を除くと、国際水準での科学的根拠が確立している精神療法は認知行動療法と対人関係療法のみですが、強迫性障害には対人関係療法の効果が認められないため、「神経性過食症/嘔吐を伴う過食症」と「過食性障害/嘔吐を伴わない過食症&むちゃ食い障害」の約40%は対人関係療法が無効ということになります。
これはどのように考えたらよいのでしょうか。

 

強迫性障害と摂食障害が併存するケースでは、摂食障害の発症年齢が平均17.4歳であるのに対して、強迫性障害は14.4歳と摂食障害に先行しているものが多かった、という報告があり、強迫性障害が先行するタイプは、摂食行動異常が不安・不快感の一時的な気分解消行動になっていると考えられるため、対人関係療法での治療適応にはならないようです。
(強迫観念の不快気分解消行動として「だらだら食い」もよく見られます)

 

強迫性障害との関連があるとされる「完璧主義」は、摂食障害では、一日に何度も体重を測る、あるいは食べものの重さを量るなどで知られていますが、体重回復後も修正されないこと、幼少期から存在することから自閉症スペクトラムなどの生物学的脆弱性に基盤を持つ素因ではないか、といわれていますし、完璧主義と承認の必要性の研究では認知行動療法に対して対人関係療法の有効性は見出せなかったと報告されています。

一方でうつ病に伴う強迫性パーソナリティ障害の患者には、認知行動療法よりも対人関係療法が有効だったという報告もあるのです。
(社交不安障害とオーバーラップする回避性パーソナリティ障害は認知行動療法が有効ですが、対人関係療法の適応にはなりません。)

どうも損害回避行動である強迫性(強迫症状や完璧主義)と、固執による強迫傾向(強迫パーソナリティ)が混同されているようですよね。

 

三田こころの健康クリニックでは強迫性障害のスクリーニングとして、エール・ブラウン・強迫観念・強迫行為尺度を使っています。

強迫症状のプロファイルでみると強迫観念の種類が多い場合や、確認・反復行為、順序・対称性、ため込み、質問癖、触る・叩く、あるいは叩頭や抜毛などの強迫行為がある場合は、対人関係療法での効果は乏しいだけでなく、現実の出来事と症状の関連がなく、対人関係文脈が読めないため、対人関係療法による治療の適応にならない場合が多いようです。

 

つまり摂食障害の対人関係療法の導入の際には、強迫性障害の先行の有無を確認するだけでなく、
その症状内容についても吟味する必要がある
ということですよね。
(『過食症の背景と対人関係療法の適応』参照)

院長