摂食障害と夢〜心の中を見わたす

三田こころの健康クリニック新宿では、初診時に摂食障害の中核にある「アレキシサイミア(感情言語化困難)」について説明をしています。

「アレキシサイミア」には、心の中ををふり返ること(省察)が乏しく、自分の気持ちへの気づきや、気持ちを言葉にすることが苦手で、心の中の葛藤が身体症状として出現しやすいという特徴があります。
加えて「アレキシサイミア」は、他者の表情を始めとする非言語的なコミュニケーションを読みとることも苦手だといわれています。

摂食障害の背景にある「アレキシサイミア」を改善していくために、情動を身体感覚として捉えること、感情として言葉で表現すること、そして感情や情動を心の中で抱えておけるだけの心の枠組みを拡げることの大切さを説明しますよね。

 

情緒的な達成や成熟には、フラストレーション情況において被害感に陥らずに、いかにそのフラストレートされた心情をこころの苦痛として自己の中にコンテインしていけるかということが大きく関わっているわけです。
それがこころの体験世界を広げるという、情緒的な成熟の大事なプロセスになっていくということです。

祖父江典人『対象関係論に学ぶ心理療法入門』誠信書房

 

「アレキシサイミア」の人でよくみられるように、言語化されず心のなかで抱えることができない情動や感情は、起きているときの身体(行動と症状)に表れます。

心の中のモヤモヤ(空虚感や痛み)を食べる・吐くといった身体行動をつかって解消しようとする摂食障害は、「感情言語化困難(気持ちを感じることが難しい)」と「感情不耐(心の中で抱えておくことが難しい)」ため、感情を麻痺させる過食(むちゃ食い)や、感じなかったことにする排出行為など、「気分解消行動」として起きていますよね。

また、言語化されず、抱えきれなかった感情は、寝ているときの夢にも表現されます。

ジョンストン先生は、心を知る一つの方法として「夢〜心の旅」の大切さを挙げていらっしゃいます。

 

夢は、現実世界とは違う形で私たちに物事を伝えます。
どちらかというと、詩や絵や物語のようで、私たちの意識を介さず魂に直接語りかけ、心の奥底で共鳴する思考や感情、イメージを呼び起こすのです。
(中略)
メタファーを文字通り知性レベルで理解しようとしても、夢が伝えようとしている複雑な意味を汲み取ることはできません。ただの「奇怪な」ものにしか思えませんし、恐ろしくさえ感じられます。
知性レベルのアプローチでは理解できないどころか、理解したいとも思わずに夢を無視し、「金貨」を得るチャンスを逃してしまうのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

夢は知性レベルで解釈するものではなく、何かを指し示すシンボルとして読み解く必要があります。
さらに夢の登場人物は、現実の他者ではなく、自分自身が意識化しなかった心の一部分が他者の姿で表されていることを理解する必要があります。
精神分析や分析心理学を学んでいない治療者だと、なかなか難しいですよね。

 

夢では、現実世界で関わりのある人や、自分の一部として認めたくないために無視している自分自身が、ありとあらゆる形で表現されます。
(中略)
私たちが夢で見たり経験したりする人間関係は、自分の中におけるたくさんの自己同士の関係について、深い真実を明らかにしてくれます。私たちは自分の想像以上に複雑で、心にはさまざまな特徴や性格が勢ぞろいしているのです。
(中略)
夢に出てくるのはたいてい、私たちの注目を浴びようと叫んでいる、自分が認めたくなかったり、好きでないからと無視しようとしたりする自分です。そしてそれは、あなたの家に侵入しようとする邪魔で冷淡な悪党や、あなたを追いかけ回す犬の群れ、もしくはあなたを人質として捕まえてしまう悪魔のような化け物として夢の中に現れるかもしれません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

目が覚めている時は身体感覚を通して心の中の感情を知り、寝ているときは夢を通して心の動きを知ることを強調されるのは、摂食障害からの回復には、自分の心を知ること(自己受容を高めること)が何よりも大切だからなのです。

 

8つの秘訣』の「秘訣8」で紹介されているマインドフルネスは、心を知り心を俯瞰するための方法です。ただし、自己流で行うことはお勧めできませんし、またやり方を知っているだけの人に教わることも逆効果になります。正統な師について正式にトレーニングを積んだ人から指導してもらう必要があります。

例えて言うなら、ガイドブックを読んだだけの人や観光で訪れたことがある人と、実際にその場所を熟知している人の違いですよね。

 

それが難しい時には、シンシアのように夢を記録したり夢について自問してみることが助けになります。

 

シンシアはこう言っていました。

「夢がこんなに大切だなんて思いもしませんでした。夢のほんの一部をただ書き留めたり見直したりするだけで、どれだけ多くの情報がえられるかがわかってびっくりしました。でも一番驚いたのは、夢が自分の体を信じる手助けになってくれたことです。自分の中からこの大切な情報すべてが発信されているのを目の当たりにして、内なる自己と、体からのシグナルを信頼できるようになりました」

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

シンシアが言うように「夢が体を信じる手助けになる」のは、冒頭に書いたように寝ているときの夢と起きている時の身体は、心の中の状態が表現される土台になるからで、自分の心と身体に意識を向けて「自分自身との対人関係」を改善し、つながりや信頼感を取り戻すことが、摂食障害からの回復に必要不可欠だからですよね。

 

院長