摂食障害から回復するための「自己志向」の取り組み方

摂食障害からの回復にとって必要なことは、「深い自己受容」「価値や目的にそった生き方」である【自己指向】と、自分とは異なる他者を認めることができる【協調性】のバランスを取っていくことです。(『自己志向と協調性を高め摂食障害から回復する』参照)

そして、【自己志向】と【協調性】のバランスは、「摂食障害からの回復」だけでなく、「対人関係(愛着:アタッチメント)」の修正にも、必要不可欠な重要な要素なのですよね。

完璧を目指すこと(べき思考)をやめ、ありのままの自分を認める「深い自己受容」は、【自己志向】の中核です。

 

乱れた食行動を克服するということは、自分という人間を丸ごとありのままに受け入れることを意味します。
つまり、自分の人となりや感情、考え、そして欲望など、気に入らないものも不快なものもすべて受け容れるということです。

短所だと思っていた特徴も実は長所なのだと気づいたり、感受性の強さも自分の美しさの一部だと認識したり、人と違うからといって孤立したり拒絶されたり孤独感を味わったりしなくてもよいのだと、自分のユニークさを大切にできるようになったりすることも含まれます。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

「自己受容」は「どんな自分も認めることができる」ことで、三田こころの健康クリニック新宿では、セルフ・コンパッションの考え方を援用して、

  • 自らの思考・感情・感覚に気づいていること(マインドフルネス/自己客観視)
  • 人類共通といった見方(生きている限り誰しも感じる感情を苦悩に変えない)
  • 自分への優しさ(セルフ・コンパッション)

と説明していますよね。

 

乱れた食行動を克服するためには、自分の独自性を受け入れなければなりません。

醜いアヒルの子のように自分探しの旅に出て、この世界での居場所を見つけなければなりません。アヒルでいることには何の問題もありません。しかし、本当は白鳥なのにアヒルのように振る舞おうとするのは苦しく辛いことだと思います。何をやってもしっくりこなくて、失敗したとか能力が足りないと感じてしまうでしょう。

認められることと引き換えに自分らしさを捨ててはいけません。

ありのままの自分を見て受け入れてくれ、感情という水の奥深くまで潜って喜びを共有してくれるような人たちを見つけるまで、旅を続けなければならないのです。

鏡に映る自分の美しさを見ることができるようになるまで、忍耐強く旅を続けなければなりません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

どんな自分も認めることができる「自己受容」や【自己志向】を、自己あるいは他者の評価にもとづく「自尊心」と混同してしまうと、「自分らしさ」から遠ざかってしまいます。

 

摂食障害の治し方を説明していきますが、治療のポイントはあくまでもこの「自己志向」を高めることにあるのだということを念頭に置きながら読んでいただければと思います。

(中略)

多様な価値観を尊重できるかどうか(協調性)は、「自己志向」にかかっていると言っても過言ではありません。
自分がある程度満たされていなければ、他人の価値観を尊重すること(他者受容)もできないからです。
また多様性を受け入れる上での「不安」は、やはり「損害回避」との関連が深いものだと思います。「損害回避」に流されることなくきちんと自己コントロールするためにも、「自己志向」は重要なのです。

水島『「やせ願望」の精神病理』PHP新書

 

「低い自己評価」は、摂食障害の重要な誘因となります。
しかし、過保護な状態におかれたままだと、失った自信を取り戻したり、自己評価を高める機会を得ることはけっしてありません家族のための摂食障害こころのケア

また、自分に関する感じ方を変える上ですべてを他者に頼ることには問題があり、自己に対する見方を変えるために他者に頼る必要はないセルフ・コンパッションのです。

 

克服の迷宮を旅するうちに自分という人間の中心までたどり着くと自分らしさを発見することができて、他人が考えるこうあるべきという姿を手放すことができます。

いままで見失っていた自分らしさや無視していた側面を取り戻し、自分の完全な姿を見つけるのです。

そして次に来た道を戻り、世界の中でこの新しい自意識を組み立てていくのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

治療者あるいは自分自身が、現実(他者を含む外界)との相互作用によって生じた体験を「メンタライズすること(自分が何を感じているのかを知覚すること)」で、首尾一貫した自己体験の連続体である【自己組織化(自己の次元での成長:自己志向の高まり)】が促されるのです。

これが「新しい自意識を組み立てていく」ということです。
(『自分自身との関係を改善し摂食障害から回復する「自己受容」』参照)

「自己組織化(新しい自意識)」、つまり【自己志向】を高めることが摂食障害からの回復に必要不可欠とわかっても、自分一人で取り組んでいくことは途方もなく難しく嶮しい道のりに感じられるのも無理もありません。

 

長い間、むちゃ食いや食べ物に執着することで感情を感じないようにする癖をつけてきたのであれば、ずっと押し込められていた感情が表面に出てくるにつれて、今までよりももっと過食や絶食をしたいという衝動に駆られることでしょう。
そして、それらをとても怖く感じて、克服のプロセスを止めたいと思ってしまうかもしれません。

ですから、セラピストや支援グループなど、自分の感情が完全に表現されて尊重される関係や場所からの指導や助言を求めることをお勧めします。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

だからこそ治療者がセルフヘルプをガイドしたり、あるいは治療の中で提示された課題に日常生活の中で取り組んでいくことが、摂食障害からの回復につながるのですよね。

 

院長