拒食症の強迫性に対する対人関係療法

摂食障害の強迫性と衝動性を考えた場合、一見、拒食症では強迫性が強く、一方、過食症では衝動性が特徴のように見えます。

しかし、制限型の拒食症が、過食/嘔吐をともなう拒食症や過食症に移行したり、逆に、過食症から過食/嘔吐をともなう拒食症になったり、摂食障害の病態には移行があることはよく知られています。

 

摂食障害の衝動性の背景』や『摂食障害の強迫性と自己愛』でみてきたように、「心配性で、人の助けを借りることができない」という拒食症の強迫性には、気質としての「損害回避の高さ」や「報酬依存の低さ」、および環境との相互作用で形成される性格・性質としての「協調性の低さ」が関与しているようで、これは、完璧主義や強迫パーソナリティと関連します。

 

ある報告では、制限型の拒食症の33〜80%が、少なくとも一つのパーソナリティ障害を有し、そのうち、強迫性をはじめ、回避性、依存性など、クラスターCのパーソナリティ障害が多くみられたとされています。

クラスターCのパーソナリティ障害は、耐え難く不快で苦痛な感情や葛藤を抱えられず不安になるなど、「自分自身との折りあい」がつかないという特徴を有します。

とくに拒食症では55%が何らかの不安障害を有し、拒食症の35%が強迫性障害を合併しており、強迫性障害の発症は、拒食症に先行するタイプが多く、平均14.4歳で強迫性障害を発症するものが多かったという報告もあり、拒食症と強迫性は密接な関連があるようですし、強迫性は拒食症の発症リスクにもなっているようです。

しかし一方で、拒食症の栄養状態が改善すると強迫性が目立たなくなることから、拒食症に併存する強迫性障害の一部は低栄養状態によって二次的に生じている可能性も指摘されています。

 

強迫性障害が先行したり、併存している場合は対人関係療法の適応にはなりませんが、拒食症の対人関係療法で目指していく治療焦点は、「自分一人でかかえ込んで何とかするというやり方から、他の人の力を借りて、何とかできるようになる」という「役割の変化」が適応されることが多いのです。

性質・性格は環境への働きかけで変化することから、家族やパートナーなど身近な「重要な他者」に協力してもらい、その関係の中で「協調性」を高めることによって「損害回避」の高さや「報酬依存」の低さを調節していくのです。

 

その際に非常に大切なことは、「安心感」と「本人のペース」であり、これを周囲の人とも共有しつつ、また自分自身のでもその特徴をよく把握してうまく折り合いをつけていくことにより、パーソナリティの成熟(自尊心を高める)を目指していくという対人関係療法は、まさに理に適った治療法だと言えますよね。

その具体例が『摂食障害の不安に向き合う』に書いてありますので、拒食症の人、あるいは過食症の人もぜひ一読されることをお勧めします。

 

院長