心の状態に気づき摂食障害から回復する

三田こころの健康クリニック新宿の専門外来で行っている過食症対人関係療法による治療では、まず【自分との関係を改善する(心の状態の変化についての気づき)】から治療を始めますよね。

摂食障害の場合は「食べ物や食べる行動を使って鎮め落ち着けようとしている心の動きは何なのか」を理解していきます。

そして食べ物を使って自分をなだめる方法は、これまでは自分を大切にするためにとってきた方法だったけれども、あまり効果がなかっただけでなく、逆効果だったと気づくことから治療がスタートします。

【心の状態の変化についての気づき】への取り組み方は、目が覚めているときは「身体感覚」を感じて感情を指標にし、夢を見ているときには「夢の作り手(ドリームメーカー)」の意図を理解するという方法なのです。

 

たとえば、美術館から絵画を盗みだそうとして警備員に暴力をふるい、殺そうとしている夢を見たとしましょう。
こんな夢を見たからと言って、あなたは窃盗癖のある殺人狂というわけではありません。そうではなく、この夢は現実世界で押し殺そうとしている怒りについて何かを伝えようとしているのです。
夢で自分が起こした行動を批判するのではなく、誰に怒っているんだろう?と自問してみてください。あなたの独創性を否定している人はいませんか?
(中略)
あなたの内なるドリームメーカーは、困難な状況における一番のガイドです。
それは、現実世界で起きている話のひとつ先の話を見せてくれ、自分という人間に関する事実のすべてを発見できるよう、前に進むことを促しながら、手招きをしてくれています。
イメージや言葉遊び、そして心の状態といったユニークな言語を使って、逆説的に、あなたが今まで気づいていなかったり活用していなかったりした自分の一部に「目覚めさせて」くれるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

「夢の作り手(ドリームメーカー)」はメタファー(隠喩)という形で、本当に必要なモノやコトをシンボルとして指し示してくれます。

対人関係療法では、「自分自身の期待を整理する」という言い方で、「何を観察しているのだろうか」「何を感じているのだろうか」「何を必要としているのだろうか」「私自身、あるいは他者に対する要求は何だろうか」と、自分自身(あるいは夢の作り手)とコミュニケーションしていきますよね。

 

食べ物との葛藤の本質を理解しようとしている女性にとって、夢は、彼女が本当に渇望しているのは何か、満たされていない欲望は何か、体のサイズでもって解決しようとしてる内なる葛藤は何か、食べ物で押し込めようとしている感情は何か、そして何を怖れているのかを紐解く大切な手がかりとなります。
夢で見るメタファーによって、食べ物や脂肪、そして太ることが、現実世界でどのように役に立っているのかが明らかになるのです。
ときには夢が強烈な形で、自分のどんな側面を無視したいのかや、食べ物やダイエットを使ってどのようにそれを隠しているのかをも明らかにしてくれます。
また、今からどうしたらいいのか、どんなスキルを学ばなければならないのか、どんな内なる声を聞かなければならないのか、そしてどの内なる情報源に頼るべきなのかも教えてくれるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

「夢は見ないです」「覚えていないです」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。
夢を見ない/覚えていないことは、自分の心の動きがわからないということなので、自分の心をふり返ることが課題だと教えてくれているのです。

夢に表れるシンボルやメタファーは、最初は理解することは難しく感じられますよね。
それは摂食障害行動も同じで、「過食したくなるのはなぜなのか」「何が過食衝動を引き起こしているのか」をふり返っても、慣れないうちは考えだけが空回りするだけで、心の中で何が起きているのかがわからないことと似ていますよね。

 

自分の心がわからないので、心が動くと不快に感じてしまいます。
過食が起きなくて済むように、あるいは自分と向き合わずに済むように、予定をぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうと、逆にすごく苦しくなったり、その予定通りにできないときに嫌でも直面する寂寞感と空虚感がヒシヒシと押し寄せてくるときの恐怖。

摂食障害症状(乱れた食行動)は、ストレスで起きると理解されていることが多いのですが、そうではありません。

何もすることがないと感じたとき、孤独や虚しさを感じたとき、食べ物は予定と同じで「埋め合わせる/詰め込む」働きのメタファーであることを理解する必要があります。

 

乱れた食行動を克服しようとしている女性たちは、食べ物はメタファーであるということ、そしてそのメタファーを理解するプロセスを通して回復が起こるのだということを理解しなければなりません。
メタファーはたいてい理解しにくいものですので、夢を解釈していくことで(食べ物が何を象徴しているのか、太るということが私たちにとって何を意味しているのか、また、特定の感情を表現したり押し込めたり、そこから気を反らしたりするのに、どういう食行動を使っているのかが明らかになり)理解を深めることができます。したがって、夢は単なる夢ではなく、「夢の言語」を理解することで、より大きな価値のあるものとなり得るのです。

夢に注目し、解釈できるようになると、メタファーという言語がより身近になります。そして、現実世界でどのようにメタファーが役に立っているのかも理解できるようになります。
たとえば、食べ物は心の糧のメタファーで、人からの注目、愛情、そして感謝に飢えているときに私たちは食べる傾向にある、とわかるようになるのです。
食べ物を詰め込むことが、表面に出ていると危険な感情を押し殺すための死にもの狂いの行動だということも明確に認識できるようになります。
そして、太るということが、他人からの言葉で味わう屈辱や、口説かれることからの保護、そして他人の嫉妬からの保護を表している、と理解できるようになります。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

対人関係療法でもメタファーを理解するために、心の中をふり返ることを重視しています。

食べたいという願望のきっかけになるのが何なのかを知ることができれば、こういった問題にもっと直接取り組むことができるようになるでしょう。
自分の反応や気持ちをはっきりつかみ、コントロールし、表現することを学べば、自分を落ち着かせたり、慰めたりするために、食べ物に走らないですむようになります。

ウィルフリイ『グループ対人関係療法』創元社

摂食障害から回復するために、何度も何度も自分をふり返り、自分の心の中で起きていることや、自分自身との対話をノートに書き出す練習をしてみてくださいね。

これが、考えと現実・事実を混同することから抜け出すために必要な、心の中で起きていることから距離をとり、心の全体を見わたす練習になるのですよ。

 

院長