対人関係療法による摂食障害の治療と『素敵な物語』&『8つの秘訣』

摂食障害(過食症・むちゃ食い症)の対人関係療法による治療では、「自分の気持ちをよく振り返る」「行動の仕方を変えていく」に取り組んでいきますよね。

「行動の仕方を変える」ことは、過食をガマンするとか、過食したい気持ちを感じないようにする、ということではありません。

「行動の仕方を変える」ということは、過食衝動が起きたときに、過食衝動を引き起こした心の動きを振り返る練習を繰り返して、「過食衝動とのつきあい方」を変えていくのです。

 

過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。
「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」
はじめは難しいかもしれません。

動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているものや気持ちに注目してみてください。
そのときに起こっているものに、です。
これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。

ウィルフリイ『グループ対人関係療法』創元社

この取り組み方は「衝動の波に乗る」とか「一時停止ボタンを押す」と言われます。

8つの秘訣』p.209にも「過食する前に、どんな感覚があるのかを探ってみる」として似たような取り組みが紹介されていますよね。

 

ここで必要なのは「過食したい衝動に抵抗するために、4つ目の秘訣で紹介した困難な考えと気持ちに対処するための練習と、これから7つ目の秘訣で紹介する周囲の人に助けを求める方法を試してみるとよいでしょう8つの秘訣」と、【自分との関係を改善する】と【周囲の人との関係を改善する】の2つに取り組んでみることが勧められています。

 

自己認識レベルを根気強く上げていくにつれ、過食をする直前に、過食を引き起こす感情に気づけるようになります。(中略)いずれにしてもまだ過食することを選ぶかもしれませんが、自分が求めているのは体の栄養ではないということが完全にわかっています。
(中略)
そして、いずれは自分の感情を表現するための、食べ物以外の方法や道具を見つけられます。
友達に電話をして感じていることを話したり、母親宛に送らない手紙を書いて、そこに気持ちをぶちまけたりといったように。シャワーを浴びながら大声で悪態をついてもいいでしょう。母親に電話をかけ直し、自己主張の公式(16章:P212)を使って彼女の言葉がどう気分を害したかを伝えるのもいいですね。
(中略)
このときまでに自分の気持ちをはっきりと伝えることに慣れていたら、その瞬間に怒りに対処する方法を思いつくことができます。
(中略)
このようにすることで、過食を食い止めることができます。
感情が起きた瞬間にそれを経験し、直接的に表現しているので、感情はすぐに通り過ぎていきます。つまり、もう感情を意識から追い出すために過食する必要はないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

素敵な物語』での取り組みでも、対人関係療法や『8つの秘訣』と同じで、「自己認識自分の気持ちをふり返ること)」がすごく重要ですよね。

この課題に根気よく取り組むことによって、「過食をするか/しないか」の全か無かから離れて、過食衝動と過食は、しだいに直前に感じた気持ちの大きさに比例するようになってきます。

 

ここも自己批判をするときではありません。「私はいったい何をしているの?お腹なんて空いていないってわかってたじゃない!」というのではなく、過食が始まるときに抱いていた感情が何だったのかがわかっていることを認めてあげなければなりません。
自分を叱りつけるのではなく、自分がどれだけ成長したかを認識するのです。やっと、感情がわかったうえで過食をするかしないかを選択する分岐点までたどり着いたのですから。

この状態からまた一歩踏み出すには時間がかかるかもしれません。
感情的な理由で食べようとしていることを完全に自覚していても、「どうでもいいや。どっちにしろ食べちゃえ」と言って過食をする場面がたくさんあると思います。
しかし、自分の感情を受け入れて直接的に表現する方法を学んでいけば、別の選択肢がたくさんあることにも気づき始めるでしょう。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

大切なことは、「「どうでもいいや。どっちにしろ食べちゃえ」と言って過食」をしたときに、「安心行動」つまり「言い訳をしない」ということです。
(「安心行動」については『「摂食障害ミンクス(分身)」に振り回されているお子さん(エディ)を支える』参照)

 

自分自身に言い訳をすると、後ろめたさを感じて、「過食衝動の波に乗る」取り組みを避けようとして、ますます自己評価が下がり、さらに気持ちや状況に対する回避行動が増え、過食がぶり返すという悪循環を作ってしまうのです。(『摂食障害を維持している対人関係パターンを変えていく』参照)

うまくいかなくても、自己批判をせず自分に優しい気持ちを向けられるようになる必要がありますよね。(『摂食障害からの回復過程の紆余曲折をどう意味づけるか』参照)

 

感情を抑え込んでいることが無茶食いにつながると頭でわかるだけでは十分ではありません
チョコチップクッキーをもうひとつ、ピザをもう一切れと手をのばしているその瞬間に、その行動を引き起こしている感情が何なのかを特定できなければならないのです。

しかし、過度なダイエットの根底にある問題を指摘できるだけではだめです。それを解決するための何かをしなければなりません。

また、過食嘔吐の引き金となっている感情を特定するだけでは不十分です。
本当に欲しい心の糧や安心感をもたらしてくれるような方法でその感情に対処しなければならないのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

ジョンストン先生がここで強調されているのは、対人関係療法でも取り組む課題として挙げている【自分との関係を改善する(心の状態の変化についての気づき)】【行動の仕方を改善する(感情・考え・情動のコントロールについての気づき)】に主体性を持って取り組むということなのですよね。

 

院長