女性らしさ〜直感力を取り戻す

過食(むちゃ食い)や過食嘔吐の治療1』で、摂食障害の人たちは「内受容感覚への気づき」が低いことを説明しました。

自分の心の中ををふり返ること(省察)が乏しく、自分の気持ちへの気づきや気持ちを言葉にすることが苦手で、心の中の葛藤が身体症状として出現しやすい状態を「アレキシサイミア(感情言語化困難)」と呼びます。

一方、身体感覚(内受容感覚)への気づき困難は「アレキシソミア」と呼ばれます。

心の空虚感を身体の空腹感と錯誤して、食べ物で埋め合わせようとするのが、「アレキシサイミア」「アレキシソミア」の良い例ですよね。(『身体の空虚感と心の空腹感』参照)

内受容感覚の気づき困難から過食症やむちゃ食い症が発症し、(1)気分解消行動としての過食を使う段階、(2)食行動が嗜癖となり防衛構造としての自己を形成する段階、(3)生活が狭窄して人生が混乱する段階と、乱れた食行動が進展していくプロセスを『気分解消行動としての過食〜体験の回避』で説明しました。

 

そして、内なる声を無視したり静かにさせたりするのに一番良い方法として思いついたのが、食べ物、太ること、そしてダイエットに執着して気をそらす、ということだったのです。
「ガットフィーリング(腸の感覚、つまり、勘)」に応えるには、内なる声をまるでお腹がグーグー鳴っているかのように捉え、胃に食べ物を入れればいいのだ、と思ってしまったのです。
乱れた食行動を克服するためには、直観能力を取り戻し、自分の中にある智恵や導きの情報源を見つけなければなりません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

内受容感覚は、大雑把にいうと内臓感覚(ガットフィーリング)に近く、『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』では、女性らしさ、つまり右脳的な「直観」として説明してあります。

 

直観は、自分の心に正直であり続けることで見えてくるものです。
女王様は自分の気持ちを信じ、正しい道へと導いてもらうことにしました。
(中略)
そしてこの気持ちが、ただ与えられた指示に従うのではなく、より創造的な解決策はないかと模索するモチベーションになったのです。
(中略)
乱れた食行動という拘束から解放されたいのなら、まず、直観がもたらす衝動を受け入れなければなりません。
内なる声を聴き、直観を再発見し、その賢さを認めるのです。
これは毎日、体からのサイン(ガットフィーリング)と本能に気を配り、衝動や予感を無視しないということです。そして、感情や洞察力が与えてくれる情報を導きとして使う、ということでもあります。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

自分に正直であり続けることについては、『過食症の自己欺瞞に向き合う』や『ありのままの自分と向き合う』で解説したので参照してくださいね。

 

ジョンストン先生は、「直観」にアクセスするために、マインドフルネスを勧めています。
このやり方は、自分は何を考えているのだろう?何を感じているのだろう?と考えると同時に、言葉になる以前の感覚を感じる(気づく)ことなのです。

 

直観にアクセスするには、受容的でなければなりません。
何もせずにじっと座り、「何かをしていること」ではなく、「今ここに存在すること」に気持ちを集中させる時間を日常的に設けてみてください。
いろいろな考えや感情に気づいてください。
何度も出てくるイメージやアイディアにも気を配ってください。
感情を受け入れてください。
批判することなく、ただ流れに任せて受け止めてください。
何を感じている「べき」かではなく、今何を感じているかに集中してください。
ひとつでも押しやって隠してしまった感情があると、直観にはアクセスできません。
いろいろな感情を知り、それぞれが体のどこにサインを送ってくるのかを知ることも大切です。
そうすることで、直観的な衝動を恐れととり違えることがなくなります。
自己批判は一切捨ててください。
直観からのメッセージを批判するのではなく、好奇心をもって、いろいろな質問を投げかけてみてください。
「どうして仕事に行きたくないんだろう?何かが引っかかっているけれど、何だろう?どうしてこんなふうに影響されているんだろう?この状況がどう変わったら、すっきりするかな?」。
好奇心を持って質問するたびに、内なる導きを呼び起こすことができるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

このような「省察(心で心を見渡すこと)」は、「メンタライジング」あるいは、「心についてのマインドフルネス」と呼ばれます。マインドフルネスは瞑想のことではなく、自分の心の中で起きていることや身体の感覚に気づいていることなのです。

自分自身の内側と向き合い自己内対話をくり返すこと(自己志向)、他人と接している間も自分自身と他者の心の状態に気を配っていること(協調性)が、バランスよく同調しながら高まることが摂食障害からの回復にとって重要なのです。

それは「自分自身が一番よく答えを知っているのに、外の世界に答えを求めすぎている」状態から抜け出す必要があるからなのですよね。(『対人コミュニケーションと自分自身との関係』参照)

 

ジョンストン先生はこうおっしゃっています。

(乱れた食行動の)克服は、(自分はおかしいんだという)自己批判をやめること、必要なライフスキルを学ぶこと、次のステップに進む準備ができているよと教えてくれる自らの内なる声を信用すること、というプロセスを、ゆっくりと一歩一歩進んでいくことなのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

摂食障害行動(乱れた食行動)という嗜癖から抜け出すには、ジョンストン先生がおっしゃるような自分の心と身体とコミュニケートしながらつながることを、少しずつ積みかさねて習慣化(ポジティブ・アディクション)していくことなのですよね。

 

院長