嗜癖としての食行動

f36c375c339f1212cceb122fdb9d0808_s複雑な問題を解決したり、コミュニケーションにとって
言葉(言語)は大きな役割をもつと同時に、
自分自身や他者を評価したり、比較するときにも、
あるいは過去の出来事を反すうし後悔したり、
未来のことを思い悩んで不安になることにも影響します。

「体重を減らさなければならない」
「痩せているのが美しい」
「私は太っているから価値がない」
「体重を落とさなければ幸せになれない」
「私は醜いから受け入れてもらえない」
過食症やむちゃ食い障害の人が抱くこれらのネガティブな自己評価は
単なる思考や言葉に過ぎないのですが、
思考に囚われ(認知フュージョン)それを現実と思い込むことから
苦痛や感情的不快感が生まれます。

苦痛や感情的不快を和らげるためのむちゃ食いや
体重や体型に関連する思考に対抗するためのダイエットなど
機能的ではない形で苦痛な思考や感情に対抗しようとする行動は
痛みを伴う感情から自分を切り離してくれるように感じ
慣れ親しんだ行動パターンと自分と同一視しはじめます。

慣れ親しんだ行動パターンと自己一致することで
一時的には安らぎと安心感が得られますが長続きせず、
体験の回避の後では苦悩がさらに大きくなるために
ますます慣れ親しんだ行動にしがみついてしまうのです。

体験の回避は、痛みと困難を伴った感情から逃れたいという思いと
痛みや困難を伴った感情への拒絶と怒りからなり、
ますますネガティブな自己評価を強めてしまいます。

「食行動障害が嗜癖になり防衛構造としての自己を形成する段階」は
苦痛からの防衛であると同時に苦悩の牢獄でもあるのです。

ネガティブな自己評価(拒絶と怒り)と
それを回避するためにますます食行動にしがみつくという
混乱あるいはアンビバレントな状態が
「生活が狭窄し人生が混乱する段階」です。
この段階は苦しみの度合いが最も大きく、
痛みと闘うために痛みを使っているような感じで
人生から自己を切り離しています。

これらの段階では頭の中の考え(脳内劇場)に退避することが
さらなる苦痛を生みだしていることに気づく必要があるのです。

過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。
「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。
それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。
この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」
はじめは難しいかもしれません。

動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているものや気持ちに注目してみてください。
そのときに起こっているものに、です。
これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

摂食障害から回復するための8つの秘訣』でも同じですよね。

◎過食する前に、どんな感覚があるのか探ってみる
次に過食したい衝動に駆られたら、「衝動の波に乗った」ままで5分から10分ほど内面を探り、気がついたことを書き出してみましょう。
衝動の波に乗りながら、次のように自分に問いかけてみてください。
「私は何を感じているだろう」、「衝動を感じる直前には、何が起きていただろう」、「何を避けようとしているのだろう」。
コスティン&グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

目の前に「見えている」のが現実(アクチュアル)で
「見ている」ものが実際(リアル)ですから、
それらと自分の中の思考や感情を観察することを通じて
思考との同一化から抜け出していくことが重要です。

そのために変化の段階の準備性(レディネス)を含めて自分自身をふり返り
自分に対する判断を手放し、変化に対する態度を身につける必要があります。

変化に対する態度とは、
水銀のように地面に落ちても性質が変わることなく
塵と混ざり合うこともなく、自在であることです。

人間関係から解放されて気楽さを感じることは
自己概念が問題にされることのないかりそめの安定でしかなく、
その根底には深い孤独感が横たわっており、
他者からの思いを受け取ることに対する絶望感を覆い隠している
ということを認める必要があります。

れほど自分の行動を変えないといけないのか、本当に理解して回復への道をたどり始める人は、それほど多くないと思います。
私は、あまりの心もとなさと、未知なるものを信じることの難しさに、圧倒されてしまったことを覚えています。
でもいろいろと考えたあげく、未来に何が待っているとしても、それは私がこれまで持っていたものよりも、今持っているものよりも、きっとずっと私の役に立ってくれるはずだと思うようにしました。
生まれてからの3分の2以上の時間を摂食障害行動に振り回されて苦しみながら生きていたので、それを手放していくことは果てしなく大変な作業でした。
でもともかく、ひとつ、またひとつと、行動を変えていきました。
——KM
コスティン&グラブ『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

一人でも多くの人が回復の道をたどっていただきたいと思います。

院長