ネガティブな感情と向き合う

摂食障害の治療を専門にしていない医師や心理士、カウンセラーの中には、摂食障害から回復するためには、摂食障害行動に対して何度も何度も「No!」と言い続ける(摂食障害行動を我慢する)必要があると主張する人たちもいますが、これは間違ったやり方で、逆効果にしかなりません。

 

なぜなら摂食障害は、「健康な部分」が自分の一部を出来損ないと見なして批判し攻撃することから始まるので、「病気の部分」を取り除こうとするのは、自分の心の中で起きている闘いを続けさせることになってしまうからです。

 

乱れた食行動を克服するには、自分がどう感じているのかを認識し、ひとつひとつの感情を区別できるようになることが必要不可欠です。まずはすべての感情を批判することなく受け入れなければなりません。感情は意味をなさないこともあるし、好かれないこともあるけれど、ただ受け入れなければならないという考えを定着させる必要があります。そして最後に、率直に表現することと、正直さと誠実さをもって行動する意思が必要です。 

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

感情を感じるプロセスで過去のさまざまな出来事の記憶が、不意にフラッシュバックのように思い出されることがあります。とくに愛着の傷つきの治療をしていると、封印されていたさまざまな怒りが解き放たれたようにあふれ出てくることがあります。

このようなとき「パンドラの函」を例えとして、そのような封印されていた感情そのものはただ認め、大切なことはその奥底にある希望を見いだして手にすることだと説明していますよね。

 

感情はエネルギーの波で、私たちの中を流れていくことも、それを塞いでしまうこともできます。けれど、ただ消え去ることはありません。無視したり押し殺したりすると、ますます力を増し、ねじれて間違った方向に表現されてしまうのです。 

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

満たされなかった過去の欲求を満足させることを探し求め、自分の中にひどい空虚を見つけだしてしまったときには、過去は変えられないことを理解して過去に対する執着を手放すこと、満たされなかった渇望や過去の痛みから完全に解放されたいという欲望を、空想は空想として抱えておくことのできる自我の強さが必要です。

自我の強さを培うために、心の中で起きるさまざまな現象は力として感じられるけれども、実体はないことを体感的に実感していくマインドフルネスのトレーニングによって、「心の枠組みを拡げる(葛藤耐性・気分耐性を高める)」ことに取り組む必要があります。

 

感情に逆らったり無理に離れようとしたりせず、きちんと感じて経験できると、まったく違うことが起こります。しっかりと向き合えば、奇跡のような素晴らしい経験ができ、感情は徐々に勢いを失います。私たちの中を流れてどこかに行ってしまいます。そして、感情に悩まされたり塞ぎ込まされたりすることなく、自由を感じて前に進むことができるのです。

同じ感情が二度と戻ってこないというわけではありませんが、ブロックするのではなく、感情という波の乗り方を一度覚えれば、波が過ぎるのがどんどん早くなり、より少ない努力と苦しみで乗り切れるようになります。 

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

求めても得られない過去の記憶に対しては、賠償を求めないように脇に置いておく必要があります。変えられるのは、今の自分との関係、自分との向き合い方だけなのです。

摂食障害の不安に向き合うときも同じで、不安を引き起こしそうな状況を回避したり、不安を引き起こすかもしれない未来の状況への対処に時間と労力をつぎ込んだり、あるいは他者にくり返し安心を求めることは逆効果になります。そうではなくて、身体が感じているエネルギーである不安や恐怖と正面から向き合うことが必要になのです。(『不安のメカニズム』参照)

 

そして恐怖は、逆説的ですが、きちんと向き合うことで物事に変化をもたらすことができます。恐ろしく感じていたものが、それに向き合うことで反対に、確信や前に進む勇気を与えてくれるのです。恐怖を否定したりそれと争ったりすると、待っているのはパニックと停滞です。向き合うことで、安心感を抱くには何が必要なのかを発見できるのです。

また孤独は自己認識をもたらしてくれます。孤独を感じたくないばかりに忙しくしたり走り回ったりするのではなく、じっくりと向き合ってそれを深く理解すると、なぜ自分が人から距離を置いているのか、どう距離を保っているのかを学べるでしょう。

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不安や恐怖と向き合うために「感情の波に乗る」心の使い方を身につける必要があります。
(一時停止ボタン:強い情動が生じたときに、すぐに行動に移るのをやめて、その情動について考えること。)

摂食障害行動を引き起こすネガティブと評価した感情と向き合うこと(自己志向のうち自己受容をたかめること)が逆に、それらの感情からギフトをもらうということにつながりますよね。

「自己志向」と「協調性(関係性)」のバランスは安定型愛着の土台であり、自分と向き合う「自己志向」を高めることが「協調性(関係性)」を維持することにもつながり、「協調性(関係性)」という安心基地は「自己志向」を支えるということですよね。

 

院長

 

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