『過食症:食べても食べても食べたくて』の紹介

摂食障害ホープジャパンの代表でもある安田(山村)さんが『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』『摂食障害から回復するための8つの秘訣』に続き、『過食症:食べても食べても食べたくて』の翻訳を上梓されました。

 

訳者あとがきに「この本は、二十五周年記念版ですが、もともとの本は、『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』の著者であるジェニーさんが、摂食障害に苦しみ、もう絶対に治ることなんてないのかも、リンジーさんが回復できたとしても自分には無理なのかも、と思っているときに読まれたものです。また、私が、過食症に関する本ではどれがお薦めだろうかと、『摂食障害から回復するための8つの秘訣』を書かれたキャロリンさんに質問したところ、勧めてくださった本でもあります」とあります。

私もこの本は、過食症から回復するためのさまざまなツールとエッセンスが凝縮された優れた本だと思います。

 

何といってもこの本の最大の特徴は、第I部の「過食症を理解する」の解説と、第II部「過食症から回復する」にあるさまざまなコーピング・リストと、「過食をやめるための二週間プログラム」でしょう。

 

このプログラムをご覧になると、「ええ?こんなことが、どんなふうに過食症の回復と関係しているのだろう?」「試しても、よくなるとは思えない、関係なさそう」と思われるかもしれません。

食べ物と、心のあり方、自分自身に対する考え、とらわれ、人間関係などがどのように関係しているのだろうか、また、摂食障害が生きていくための対処方法というのはどういうことなのだろうか、と思われるかもしれません。

というのも、患者さんたちが、摂食障害からの回復に取り組む初期の頃には、自分の気持ち、感情、思考などが絡み合って過食症という病気を起こしているとは、なかなか把握できず、いや、体重が、いや、食べ物が、痩せさえすれば、と、表面的な症状にとらわれがちだからです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店 訳者あとがき

 

この本の「第2章 怖がらずに何でも食べる—過食症から回復した私個人の物語」に、過食や過食嘔吐、あるいは盗食という「習慣と共に生きた」リンジーさんが、「素直に発言する、感情を正直に認める、毎日書き留める」というマーリン医師から勧められた行動に対して、日記を書くことでよくなるという確信を持ったエピソードが書かれています。

 

そして、「とても深いレベルでは、今回に限っては自分が正しいことをしていると感じていました」と直観を信じ、身体感覚を感じて食べ物と向き合い、過食症なしの自分を探し、「自分の摂食障害は食べ物よりも感情に関連していると認識するに至り」、過食症から回復されたプロセスを振り返っていらっしゃいます。

 

まずは、読者のみなさんにも、摂食障害というのは本当に病気であり、治療が必要であるということ、そして何よりも、理解してくれる人、話を聞いてくれる人、ありのままの自分を受け入れてくれる人が必要なんだということをおわかりいただければと思います。

患者さんが悪いわけでもない。ご家族が悪いわけでもない。そして、日本でもアメリカでも、摂食障害は食べ物の問題ではない、と言い切る医療従事者もいますが、それでも、食べ物、食事、体重、体型などの問題にかかわらないかぎりは、いくら「なぜ」を探っていっても、完全に回復することはできないでしょう。

もちろん「なぜ」がわかることは、患者さんにとっても、ご家族にとっても、回復への動機づけを高めるとは思いますが、それでも「どのように」回復していくのかということに具体的に取り組まないかぎり、摂食障害から回復するということは難しいのです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店 訳者あとがき

 

「第4章 専門家による治療」に「過食症の人に共通する間違った考えの一つは、自分で治せるというものですが、これが真実であることは稀で、そう思い込んでいるのは、おそらく人間関係全般への恐れによるものでしょう。したがって、専門家による治療こそが、恥ずべき行動を思い込んでいることに直面する方法であり、他人を信頼して関わる方法を学ぶ機会でもあるのです」とあるように、「摂食障害ではなく人々に助けを求める」ことが必要なのです。

 

さらにこの本には「摂食障害を治療してくれる専門家はどのように選べばよいのでしょうか?」という質問に対するアドバイスも載っていますよ。
(『摂食障害から回復するためにはどのような治療者を選べばいいのか』も参照してみてくださいね)

 

治療を受けるということは、時間・お金・エネルギーを費やすわけですから、「過食症からの回復とは、あなたができる自分への再考の投資なのです!」と、過食症から自分の人生を取り戻す決意が大切だということを強調されています。

 

また、「誰を専門的な指導役に選んだとしても、その人の役割は、あなたを「治す」ことではく、自分自身を助ける力をあなたに与えることなのだと覚えておいてください」と、自分の人生は自分が主人公であることを忘れない(思い出す)ことがすごく大切だと思います。

 

いずれ、みなさんも振り返ってみたときに、ああ、私の過食症は、私がこれまで生きてくるなかで、こんなふうに、私の役に立っていたのか、と気づくことができると思います。

そしてもうこれからは、過食症を使わなくても生きていける!という自信がわいてくると思うのです。

ホール&コーン『過食症:食べても食べても食べたくて』星和書店 訳者あとがき

 

リンジーさんも体験されたように、最初は病気の治療としてスタートしたとしても、過食症からの回復の過程で、「過食症のない自分はいったい何者なのか」、と「自分の生き方に向き合う」プロセスに移行します。(Akoさんの「摂食障害が教えてくれること」の「バイバイ、摂食障害。」を参照してみてくださいね。)

 

過食症・過食性障害に対する対人関係療法のもっとも新しいバージョン(IPT-ED)では、「人生の目的(ライフ・ゴール)」が問題領域の中に組み込まれています。

三田こころの健康クリニック新宿の〔専門外来〕でも、2015年からこの新しい対人関係療法のやり方で治療を行ってきました。

 

三田こころの健康クリニック新宿の〔専門外来〕で行っている過食症という乱れた食行動を手放しながら、自分の価値や目的に沿った生き方を模索するプロセスにシフトしていく最新の対人関係療法(IPT-E)のすすめ方と、『8つの秘訣』や『過食症:食べても食べても食べたくて』の考え方は、すごくマッチしているのですよ。(『摂食障害という生き方を手放すために』も参照してくださいね)

 

院長