愛着と対人関係療法

情動調律してくれる重要な他者がすぐ近くにいて、自分はその人に包まれている、と内在化できることで心の健康やレジリエンス(回復力)が形成されるということがわかっています。
これが愛着(アタッチメント)ですよね。

情動調律をしてくれる他者は、両親に限る必要はありません。
親戚であったり、あるいは友人や教師、カウンセラーや治療者など他人でもいいのです。
そのような人と関係を構築できることが愛着だけでなく、心の発達にも重要な役割を果たすのです。

 

いわゆる「愛着障害」、すなわち「愛着軽視(回避/拒絶)」型や「とらわれ(不安/アンビバレント)」型などの「不安定型の愛着スタイル」は、疾患ではないため、それ自体は治療対象にはなりません。

しかし対人関係療法の適応となる疾患を併発しているときや、夫婦パートナー関係の問題を抱えていらっしゃる場合には、対人関係療法とは別に、愛着ストラテジーに焦点を当てることがあります。

患者の中には、性格特性、回避型愛着スタイル、あるいはその他の要因のせいで対人関係機能が乏しいことが問題である人がいる。
対人関係過敏(「対人関係の欠如」)とは、対人関係を構築し、維持する上での患者の困難のことである。
結果として、対人関係過敏の患者に対しては、より望ましい社会的スキルを持つ患者の場合とはいくらか異なるアプローチが必要となる。
短期精神療法の理論と実際』「第五章 短期対人関係療法」星和書店

実際、対人関係療法(+α)でやっていくことは

・ 満足のいく新しい対人関係を築く助けとなるモデルを提供すること
・ 新たな人間関係で起こりうる問題の予測

を行っていくのですが、その中で

・ 対人関係において繰り返されるパターンを探る
・ 治療者に対する感情のフィードバックと他の関係との類似を探る

という、まさに対人関係の土台となる愛着スタイル(対人関係パターン)を扱っていくのです。

 

しかし重要な他者(両親やパートナー)との間の愛着スタイルは固定したパターンではなく、前意識的にスイッチが入るストラテジー(方略)として表現されるため、手続き記憶(ワーキングメモリー)に対する気づきを高める必要があります。

これが「いくらか異なるアプローチが必要」ということで、三田こころの健康クリニックでは、明晰さと開放性を高めるマインドフルネスのやり方を指導していますよね。

 

また、非常に大切なことは、さまざまな研究によって、安定型の愛着スタイルの形成を最もよく予測する因子は、親自身が幼少期にどんな経験をしたかではなく、親が幼少期の経験をどのように意味づけたか?と関連する、ということがわかっています。

私たちの気分を悪くするのは他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。
とらえ方を決めるのは自分のこころの姿勢である。
怖れを手放す』水島広子・著 星和書店

というアティテューディナル・ヒーリングでも中心となる考え方ですし、

「心の不調」は、厳密にいえば直面している問題そのものから、直接生じることは決してない。
「心の不調」は、その問題を「どのように意味づけたか、どのように価値づけたか」によって生じるのである。
宇田亮一『吉本隆明「心的現象論」の読み方』文芸社

のように、子の安定型の愛着スタイルは、養育者(親)との関係を子どもが「secure」と体験したかどうか?ということなのです。

 

ですから、愛着のパターンは遺伝的影響から独立し、両親である父親と母親に対しては異なる愛着を形成したり、里子や養子研究でも、血のつながりのない他人であっても、親子と同様の愛着が形成されるのです。
その際に、情動調律をしてくれる他者の心がコピーされ、それが獲得安定型の愛着スタイルを形成する土台になるのですよね。

 

院長