変化を上手に乗り越えるには

変化のときには「まぁ何とかなるだろう」というコントロール感が失われてしまいがちになります。

ここでいうコントロール感とは、最終的に望ましい結果をもたらす自分の行動を自ら導き、方向づけ、調整するプロセスのことで、「セルフ・エフィカシー(自己効力感)」と呼ばれます。

 

このコントロール感(自己効力感)は

・モニタリング:観察・位置づけ
・評価:価値のみきわめ
・強化:もういちど自分の力を感じられるようになる

という段階を経て行動を選択していく(自己決定)ことを「セルフ・マネージメント(自己管理)」と呼びます。

 

ところが、気分変調性障害(慢性うつ病)やトラウマ/PTSDなどの病気があると、「なぜ自分はこの程度のことが出来ないのだろう」と自責的な症状が出やすくなりますよね。

自尊心(セルフ・エスティーム)が損なわれる病気では、「…ねばならない(べき思考)」が強くなり、ありのままの自分を尊重し受け入れることは難しくなります。

さらに変化のときの感情が強すぎて、気持ちを肯定してくれるはずの相手にぶつけ(症状でのコミュニケーション)身近な人との関係が悪化したり、悪化することが怖くて対人関係を避けてしまうなど、ますます孤立感を強めてしまうという悪循環に陥ってしまいがちになり、「望ましい結果」どころか「自分に都合の悪い結論」を導いてしまいさらに自責感が強まってしまうのです。

 

実際、このような「体験の回避」とよばれる回避行動によって症状が形成されたり、あるいは悪化することはよく知られています。

治療すべき病気の症状があるときは、感情を感じてみることも、身近な人に支えてもらうことも難しくなるためm安全確保が必要になるのです。

そんなときには、「それでもコントロール出来ること」を探すことで、自分への信頼感を回復していくことができます。
たとえば、すべてが変わってしまったように思われるときでも、一つだけでも日常の習慣を続けておくとだいぶ違います。
水島広子・著『対人関係療法でなおす トラウマ・PTSD』創元社

ということで、
・意識してゆっくり呼吸したり身体を動かして緊張をほぐしたりする、
・日常の習慣を続ける
・小さな事でも自分で選んでみる
など「少しでも自分の力を感じてふれてみる」ということを勧めておられます。

 

実際、このやり方は「役割の変化」という圧倒的に感じられる受け身の体験から、自分で何かを行うという自己決定の能動的なプロセスへの転換ですよね。

つまり、気分にかかわらず選択行動するために

・習慣化した行動を意識する
・行動パターンを知ることでいつ変えたらいいかを知る
・五感に働きかける行動をリストアップする
・過去にうまくいった体験をふり返る
・出来ることから少しずつ行う
・行動するときが近づいてきたら気分や考えに目を向ける

など、アウェアネス(自覚)を能動的に使うメタスキルコントロール感(自己効力感)を取り戻す主体化のプロセスになっているみたいですよね。

最後に、水島広子先生の「役割の変化」を乗り越えるためのアドバイスです。

原則は、「役割の変化は乗り越えにくい」ということをよく理解して取り組むことです。
つまり、私たちは、新しい役割には不安を感じやすいし、古い役割は理想化しやすいのです。
この傾向を十分に理解した上で、古い役割と新しい役割のよい面と悪い面をバランスよく客観的に見渡し、役割の変化が乗り越えられるものなのか、乗り越えるべきものなのかを判断しましょう。
また、新しい役割で必要とされる技能は大きく見えがちです。
そもそも、それがほんとうに必要なものなのか、必要だとしたら、それは一度にやらなければならないことなのか、まずは一歩踏み出してからゆっくりできることなのかを冷静に考えることによって、変化のハードルを下げることが出来ます。
水島広子・著『自分でできる対人関係療法』創元社

院長