アレキシサイミア〜右脳機能不全

アレキシサイミアと情動対処行動~多衝動型過食症」で「アレキシサイミア」について触れました。

しかしながら、この「アレキシサイミア」傾向は、最近、急増している印象があります。

 

「アレキシサイミア」は「失感情症」と呼ばれることが多いのですが、語源は「感情言語化困難症」ということです。

「アレキシサイミア」のもともとの意味は、表現力の問題ではなく感情を認識することが困難ということで、論理的思考をつかさどる左脳と感覚的思考を担う右脳とをつなぐ、脳梁の機能不全や右脳機能不全(ミラーニューロンの発達不全)と推定されています。
(『「左脳」の暴走』『「右脳」のツッコミ』参照)

 

また「愛着(アタッチメント)」との関連では、相手の気持ちを推し量り、理解するという『心の理論』の能力を基盤にした「メンタライゼーション(心を理解する能力)」、「リフレクティブ・ファンクション(顧みる能力)」など、とくに母親の感受性や応答性の影響を受けるともいわれています。
(『愛着(アタッチメント)システムは生育環境の影響も受けやすい』『アタッチメントの問題1』参照)

つまり、「アレキシサイミア」は、先天的な要因(気質)であると同時に乳児期に母親からコピーされた後天的な気質でもあるということですよね。

 

さて、この「アレキシサイミア」は、身体的自己・社会的自己・心理学的自己あるいは、アイデンティティなどの発達過程と密接に関連しますし、とくに心の病の病態水準との関係では、気質やパーソナリティ特性と関連します。

 

気分障害レベルでは「気分変調性障害(慢性うつ病)」、パーソナリティ特性では「自己愛」「スキゾイド」との関連が示唆されており、うつ病や摂食障害での比率が高く、思春期から青年期の若い世代に多いとされています。

つまり、アレキシサイミアの特徴は、慢性的に陰鬱な気分を感じていて(抑うつ)、ときに泣いたり、感情が爆発したりするものの、記憶や特定の状況に対する反応と結びつけることが出来ず、対人緊張(あるいは病的嫉妬)、不安、無力感などに気づきにくく、身体症状や感情の爆発でSOSを発しやすいとされています。

 

・自分では決められないが、プライドは高い
・孤独(お一人様)と思われたくないが、心を知られるのもこわい
・失敗体験が乏しいが、失敗恐怖の思い込みは強い

上記のような若年者のパーソナリティ特徴とともに、感情コントロールの問題(気分不耐)があり、小学校中〜高学年から思春期にかけて同年代の子どもとの関係を内在化できずに、ストレスコーピングや問題解決能力の乏しさ、ソーシャルサポートの低さから学校や職場で不適応を呈する事が多いということがわかっています。

思春期の課題がクリアーできていないということですから、「アレキシサイミア傾向」のある人に対しては、『対人関係療法・思春期版(IPT-A)』をアレンジして導入することが多いんですよ。

 

このように対人関係療法は、摂食障害や過食症だから「対人関係療法」とか、双極性障害だから「対人関係-社会リズム療法」のように、診断によってやり方が決まっているのではなく、その人に合わせたアレンジで治療を導入しているんです。

さらに対人関係療法は、苦手な対人関係を克服するためのカウンセリングとか、コミュニケーションスキルを高めるのに効果的とか、誤解されていることが多いのですけれども、そのようなメリットは確かにそのとおりなのですが、対人関係療法はカウンセリングではなく、【治療】として対人関係に焦点を当てるため、『正確な診断』とその人『全体の診立て』が絶対に必要ですよね。

院長